8年目のパイプベッド
先週末、ある友達から6年ぶりに電話がかかってきました。
そいつはボクが新潟でサラリーマンをしていた頃の仕事仲間で、今も新潟に住んでいます。
2002年に地元の会社を辞めてから今まで、3回くらいしかメールのやり取りをしていない男です。
「ワタルー! 久しぶり! 元気? 元気? 生きてた?」
「おう、久しぶりだなー。お前が電話なんて珍しいぢゃん」
「実はさー、ちょっとお願いがあってさー」
「それは無理だわ。オレお金持ってねえし」
「そんなんじゃねえよ。聞けよ。ワタルってまだ東京に住んでんの?」
「うん、まだいるけど」
「よかったー。あのさー、突然で悪いんだけど、明日の夜泊めてくんねーかな?」
「どうしたん? 奥さんに追い出されたのか? それとも家出か?」
「ちげーよ。明日そっちの友達から結婚式に呼ばれてさ。二次会出たら新幹線なくなるから
ホテルに泊まろうと思ってたんだけど、ワタルがそっちにいることを思い出して
それならワタルんちに泊まればタダじゃね? と思って電話した次第でございやす」
「え? なんでウチがタダなの? タダぢゃないよ」
「金取んのかよ」
「無料なのは女の子だけだよ」
「まぁまぁそう言わずに。久しぶりにオレに会いたいと思ってるくせに」
「全然。遺伝子レベルで思ってないけど」
「寂しいなぁ。お前はいつからそんな冷たい男になったんだ…… 東京か? 東京がそうさせたのか!」
「松屋の豚めし。330円」
「……え? なにそれ?」
「だから、ウチの宿代」
「330円でいいの? それで泊めてくれんの?」
「うん。なまらリーズナブルでしょ? しかも今ならキャンペーン中だから朝食付き」
「よし! 交渉成立だな」
「ちなみに9月1日から豚めしは値上がりして350円になります」
「へー。ってそんなんどーでもいいから明日よろしくな!」
「あい。そっちも新潟のお土産買ってきてね」
「お土産かー、何がいいんだ?」
「みかづきのイタリアン」
「何そのチョイス。ここは無難に笹団子とかにしとけよ」
「えー、イタリアン食べたい」
「気持ちはわかるけど、新幹線の中で匂うから勘弁してくれ」
「ジップロックで密閉させればOK」
「めんどくせーよ! それに式場や二次会の会場にも持って行かなきゃなんねーんだぞ」
「持って行けばいいぢゃん。てか、むしろ多めに買ってみんなに配るべき」
「アホか! 何で洋風やきそば持って一日中東京を歩き回らなくちゃなんねーんだよ!」
「いい思い出になるな」
「なんねーよ!」
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そんなこんなで次の日、その友達は終電に乗って中板橋の駅に降り立ちました。
改札までお迎えにあがり、約6年ぶりの再会。
「ういーっす。ワタルんち酒ある?」
「まだ飲むのかよ。ずっと飲んでたんだろ?」
「何言ってんだよ! 四次会やろーぜ四次会! 今日はめでたい日なんだからさ!」
「つーかオレ、結婚したその友達のこと知らないし」
「ワタル…… 人の幸せを妬むもんじゃないぜ」
「ん?」
「自分が結婚できないからってそんな風に言うもんじゃないぜ? な?」(ボクの肩に手をおきながら)
「いやいやいや、妬んでないし。意味わかんないんだけど」
「わかった。もういい。何も言うな。今日は朝まで一緒に飲んでやるから!」(ボクを抱きしめながら)
「ったく酔っ払いはウゼーなぁ。ひとりで飲んでろよ」
「きゃはははは! 酒だ酒だー!」
で、コンビニでお酒を大量に購入してその酔っ払いをマンションに連れてきたワケですが、
リビングで缶ビールを1本空けた途端、こんなことを言い出しました。
「ワタルー、オレもう寝るわー」
「はやっ! 朝まで飲むんじゃなかったのかよ」
「だって眠いんだもん。それに女もいねーし、つまんねーよ」
「相変わらずだなーお前」
「じゃあオレ、そっちの部屋のベッド借りるからよろしこ」
「ちょっと待て。それはオレ専用だからダメだぞ」
「ええー、いいじゃん、ゲストなんだし」
「ダメ。お前には客用の布団敷いてやるからちょっと待ってろ」
「ええー、ヤダヤダー」(ジタバタジタバタ)
「じゃあリビングのソファーで寝てもいいから。布団かソファーか好きな方を選べ」
「オレはあのベッドがいいの!」
「だからダメだって。実はそのベッドは壊れかけてるからオレじゃないと危険なんだよ」
「何そのヘタな嘘」
「いや、ホントだって。そのパイプベッド、真ん中のパイプが折れかかってるのよ」
「またまた御冗談を」
「嘘じゃないって。信じろよ。証拠を見せてやろうか?」
「フフフ、早い者勝ちだぜ! おりゃー!」
そう言って子供のようにベッドに飛び乗る酔っ払い。
ヤバイ!と思った時はもう手遅れでした。
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「おりゃー!」
「……へ?」
鈍い音と共に中央部分が陥没するパイプベッド。
そして、その上で呆然とする完全に酔いが覚めきった酔っ払い。
西暦2000年に9800円でニトリで購入し、ずっと愛用してきた寝室の相棒。
今まではどんなにパイプが曲がって形が歪んでも、それが原因で背骨が痛くなっても
ずっと我慢しながら無理やり一緒に生活してきましたが、ついに息の根が止まりました。
享年8歳でした。(合掌)
「だから言っただろ、パイプが折れそうだって」
「………………」
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←ちなみにこれが折れた部分 |
「あーあ、どうすんだよコレ」
「すいませんでした……」
「反省してるの?」
「はい…… だから責任をとってソファーで寝ます! おやすみ!」
「全然反省してねーだろ」
「だって、だって、普通ベッドがあったら飛び乗るよね? ね!」
「子供かよ」
「それに、乗っかったぐらいでベッドが壊れるなんて思わないし!」
「だから、その前にパイプが折れそうだって教えてあげたでしょ」
「そんなの…… ワタルの言うことなんて信じられるワケないじゃん!」
「わーい、逆ギレされたー」
「違う違う! これは逆ギレじゃなくって、えーっと…… ごめんなさい……」
「まぁ別にいいけどね。8年も使ったから減価償却して簿価の資産価値はゼロだし」
「ですよね!」
「そのうち買い替えようと思ってたからいい機会だわ。逆にありがとな!」
「あははは、どういたしまして!」
うーん、こいつにはイヤミが通じないのだろうか。
まぁいいや。
ってことでその日は、ボクがリビングのソファーに寝て、
新潟からやって来たクローバーフィールド(破壊者)は客用の布団でぐっすり眠りましたとさ。
ちなみに次の日、約束通り松屋へ豚めしを食べに行ったんですが
「ワタル、きのうのお詫びに好きなの注文していいよ」
って言われたので、豚めしをやめて牛めしにグレーアップさせていただきました。あざーす!
超贅沢しちゃった♪(もっと高いの食えよ)
>>>
さて、そんな感じでベッドを見事に破壊されちゃったワケですが、
酔っ払いを部屋から追い出した後、早速新しい相棒を探すべくネットで検索してみました。
「お金ないから1万円くらいのステチなベッドないかなー。
でもパイプベッドはもうやめよう。また壊されたらイヤだし。
普通のスプリングベッドがいいな」
グーグル先生、ポチッとな。
(カチカチ)
……おっ? これ安くね!?
デザインもシンプルだし、サイズと色も選べるのか。
ほー。
見つけたのはニッセンのスプリングマットレスベッドです。
他のサイトも素早くテケトーにパトロールしてみましたが、なんとなくこれが一番いいみたい。
よし、これに決定!
こういうのは直感と勢いが大事なんだよね。(検索所要時間10分)
えーっと、会員登録して、サイズと色を指定して、注文注文っと。
ポチッとな。
■サイズ:高脚タイプ/シングル 100×195×43(23)cm
■価格:\15,900(荷造り送料込み)
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で、次のミッションはブッ壊れたパイプベッドの処分です。
粗大ゴミは個別に申し込んで有料で収集してもらえます。
このサイトから収集の申し込みもできるからすげー便利。
希望の収集日を指定したら、その日までに専用の処理券シールを手数料分購入して
粗大ゴミにそのシールを貼って当日の朝8時までにマンションの前に置いておけばOKです。
ちなみにパイプベッドの収集手数料は900円で、我が区のシールはこんな感じ。
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300円の券を3枚購入して、今日の午前中に持って行ってもらいました。
さよならパイプベッド。
ドナドナドーナードーナー。
つーワケで、これで無事にお部屋のリニューアルが完了。
ついでに先月潰れた会社の給料がもらえないってことで、
その代わりにオフィスのパソコンとモニタを盗んできたので、
それも新たに配置して、寝室だけではなくリビングも模様替え。
作業が丸1日かかったので筋肉痛になりました。
今日はぐっすり眠れそうです。
あ、そうだ。
一応あの酔っ払いにもベッドを買い替えたことをイヤミっぽく報告しておこうかな。
(Trururururu...)
「もしもし? ベッドを壊されたワタルです」
「おおー、その節はどうも」
「大変お世話しました」
「されました」
「お前のお陰でベッドが新しくなりましたので、そのご報告です」
「おめでとう! よかったな!」
「あ、ありがとうございます」
「今度はジャンプしても壊れないやつにしたの?」
「うん。普通のベッドにしたから大丈夫だよ。サイズも前よりデカくなったし」
「まぁ今日からそこでゆっくり寝てくれ。一緒に寝る女はいないだろうけど。きゃははは!」
「……………」
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「 なんも言えねえ…… 」 |
「それじゃ、また遊びに行くんでよろしこ!」
「もうくんな」
くそう、電話なんてするんぢゃなかったぜ。
自分で傷口を広げてもーた。
あーあ、つまんない。
面白いテレビもやってないし。
久しぶりにラジオでも聴こうかなー。
ちょうど安部礼司の時間だし。
って、安部礼司の奴いつの間に結婚してたんだよ!
しかも相手は優ちゃんかよ!
ウキーッ!(ハンカチの角を噛みながら)
礼司くん、キミだけはボクの味方だと思っていたのに……
残念だ。
でも、幸せになってくれ。
もう寝よ。(フテ寝)
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