義理チョコ日和
2月13日 午前9時35分。
先月入社した後輩Hくんとの会話。
「ワタルさんワタルさん! 明日はいよいよバレンタインデーっすね!」
「落ち着け若者。興奮しすぎだ」
「だってこんなにたくさん社員がいるんだから義理チョコくらいもらえますよね?!」
「うーん、まぁ、そりゃそうだろうけど……」
確かにHくんの言うとおりその可能性は非常に高い。
ボクが所属している部署(フロア)だけでも200人以上の人が働いている職場なので
ひょっとして義理チョコだけでも10個以上は期待できるのではないでしょうか。
やべぇ、なんだかこっちまでワクワクしてきました。
「ワタルさん! オレ明日は大き目のカバン持ってきます!」
「ぢゃあオレは東京地検特捜部みたいにダンボール持参するぜ」
「あはははは」
「うはははは」
と、2人でこんなバカ話をしながらアホみたいに喜んでいたら
Notesの社内メールで衝撃的な警告文が届きました。
そのメールを凝視する2人。
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「 ……………… 」
「 ……………… 」 |
| 社員各位
明日はバレンタインデーですが、当部署では義理チョコを配布するような儀式的な行為は
一切禁止しております。
もしこのような行為が発覚した際は、厳罰に処する場合もありますのでご注意ください。
以上、何卒よろしくお願い申し上げます。
総務部
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「 そ、そんな…… 」
「 義理チョコすら貰えないのか…… 」 |
ついに出た。まさかの義理チョコ禁止令。
このような会社は結構あるってことは知っていましたが
まさかウチの会社がそれに該当していたとは知らなんだ。
まったく、こういう重要なことは入社時にちゃんと説明してくれなきゃ困ります。
これは立派な労働基準法違反ですよ?
社会保険完備する前に義理チョコ完備しといてください。
つーワケで、2月14日。
バレンタインデー当日。
前日に発動された義理チョコ厳戒態勢により、社内はいつもと変わらない雰囲気。
義理チョコの気配値ゼロ。
長年に渡り研ぎ澄まされてきたボクの義理チョコレーダーも全く反応しません。
昨日は元気いっぱい夢いっぱいだったHくんも悲しそうに言葉を発します。
「ワタルさん…… ホントに今日は無理みたいですね……」
「だな」
「はぁ……」
「溜め息つくなよお前。どんだけ期待してたんだよ」
「だってバレンタインデーですよ! それなのに…… それなのに……」
「わかったわかった。今日はオレが奢ってやるから、な。だから元気出せ」
「マジっすか! やった! 今日は2人で飲みまくりましょうね!」
と、なんだかよくわからないまま後輩と2人で飲みに行くことになって
そのまま仕事を続けていた午後6時20分。
つーか、なぜバレンタインデーに後輩と2人で酒を飲まなきゃいけないのだろう。
と、ひとりごちていたその時、1通のメールが届きました。
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「 ん? 誰からだろう? 」
ポチッっとクリック |
| お疲れさまです。
○○○○部○○○○○グループの◆◆◆◆と申します。
はじめまして。
突然のメールで失礼いたします。
急なお願いで申し訳ありませんが、お話したいことがありますので
本日7時30分に、6Fにあるカフェの前まで来ていただけませんでしょうか。
もちろん都合が悪いようでしたら結構です。
ご迷惑だとは思いますがよろしくお願いします。
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「 キタ――――――!!
」
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こ、これはまさしくロマンスの予感☆
もちろん上記◆◆◆◆の部分は女性の名前です。
会いに行ったら男だったというオチはありません。
学生時代にあった「放課後に体育館の裏まで来てねウフ」的な香りがプンプンします。
ヤバイです。
どう考えてもスプリング ハズ カムっぽいです。
是非ご指定の場所と時間に伺わせていただきます。
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「 ロマンスの神様、どうもありがとう 」
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しかし、ひとつ大きな問題が。
「ワタルさーん、今日はどこへ飲みに行きますぅ?」
こいつだ。
こいつがいた。
先に約束してしまった後輩Hの存在だ。
こやつをどうにかしなければダメだ……
うーん、どうしよう……
何て言えばいいんだ?
正直に言ったら泣いちゃいそうだよな、この若者。
うーん……
「ワタルさん、どうしたんすか?」
「え? あぁ、うん……」
「元気ないっすね。何かあったんすか?」
「いや…… あのさ、えーっと、今日なんだけど、ちょっと行けなくなっちゃった、かも?」
「えーーー?! なんでですか!」
「え? うん、実は、あの……」
「あーっ! わかった! ひょっとしてワタルさん…… まさか……」
「な、なんだよ……(ゴクリ)」
「お金がないんですね! そうでしょ? あははは!」
「へ? ……あ、うん、そう。そうなんだよ! 2000円しか持ってなくて」
「いいですよー 今日はオレが奢りますから!」
「あ、いやいや、それじゃ悪いから、明日にしようぜ、明日!」
「えーーー 明日っすかー。うーん……」
「明日はお前の好きな店で何でも奢ってやるから、な!」
「うーん、じゃあ、そうしましょうか」
「よし決まり!」
「はーい、じゃあ明日までにお店探しときますね」
「おう」
「それじゃワタルさん、今日はお先に失礼しまーす」
「おつかれー」
ふぅ……
か、勝った!
見事に障害物を撃退!
つーか、Hくんがバカな鈍感な男の子でホント助かりました。(敬礼)
ってことで
いよいよ待ち合わせの時間に馳せ参じることになったワタルさんですが
なんだか落ち着かないので事前に情報収集をすることに。
長年働いている上司のJさんを捕まえて
ストレートに質問をぶつけてみました。
「Jさん、あのー、ちょっと訊きたいことがあるんですけど」
「おう、なんだ?」
「同じ部署の◆◆◆◆さんて人知ってます?」
「◆◆◆◆さん? ああ、○○○○○グループの?」
「そうですそうです! 知ってるんですか?」
「知ってるよー。一緒に飲んだことあるもん」
「マヂっすか!? で、どんな人っすか?」
「なんだよお前、なんでそんなこと訊くんだ?」
「え? それは、えーっと…… Jさん、誰にも言わないでくださいよ」
「おう、わかった。 それで?」
「実は…… Hくんが◆◆◆◆さんに惚れちゃったという噂が」
「ホントかよ! 若いよなー、あいつ」
「ですよねー。 あ、絶対誰にも言わないでくださいよ」
「ああ、わかってるって」
「で、どんなコなんですか?」
「ぶっちゃけカワイイよ。めちゃめちゃ」
「マヂっすか!?」
「うん、安田美沙子に似てる感じ」
「キタ――――亜qすぇdrftgyふじこlp@:!!」(+ガッツポーズ)
「つーか、何でお前が喜ぶんだ?」
「……え? あ、だって、かわいい後輩のことですから」
「そっか。いい奴だなお前」
「はい。よく言われます」
つーワケで、安田美沙子に似た美人OLという情報をゲットし
意気揚々と6Fのカフェを目指す勇者ワタル(レベル31)。
どきどき。
するとそこには、はにかんだ笑顔でひとり佇んでいる美女の姿が。
ボクに気付いて軽く頭を下げます。
「こんばんは、ワタルさん。わざわざ来ていただいてすみません……」
「あのー、◆◆さんですか?」
「あ、はい、そうです。はじめまして」
「あ、どーも。こちらこそはじめまして」
「えへへ…… なんだか緊張しちゃうな……」
おいおい、めちゃめちゃカワイイぢゃねーかコノヤロウ!
ガオーーー!
ガルルルーーー!
ってことで、恥かしくなってきたのでこの話はここまで。
この後どうなったのかは内緒です。
でもこのままではみんなから怒られそうなので結論だけ言っておきます。
えー、突然ですが、彼女ができました。
わーい。
以上、信じられないと思いますが、本当に作り話です。
どうもありがとうございました。
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